Web系と非Web系リアルタイム通信技術それぞれに基づく、具体的な製品・システム・アプリの一覧

[shuji-bonji]

リアルタイム通信技術を活用した製品・システム事例

Web/インターネット向けリアルタイム通信の事例

Slack (商用, 米国)

• 分野カテゴリ: チャット・コラボレーションツール
• 採用技術: WebSocket (常時接続の双方向通信)
• リアルタイム性の実現: Slackクライアントは起動時にサーバーと恒常的なWebSocket接続を確立し、メッセージやイベントをリアルタイム受信します oai_citation:0‡slack.engineering。数百万の同時WebSocketセッションを維持する設計により、サーバー側からユーザーへのプッシュ通知でチャンネルの新規メッセージ等を即座に配信しています oai_citation:1‡slack.engineering。

Facebook Messenger (商用, 米国)

• 分野カテゴリ: モバイルチャット/メッセージング
• 採用技術: MQTT (軽量Pub/Subプロトコル)
• リアルタイム性の実現: Facebook MessengerモバイルアプリではMQTTを用いた常時接続をサーバーと保持し、チャットメッセージを高頻度かつ低遅延で配信しています oai_citation:2‡engineering.fb.com。MQTTの常時接続により電話間のメッセージ配送を数百ミリ秒程度に短縮し、従来の複数秒の遅延を大幅に改善しました oai_citation:3‡engineering.fb.com。

Discord (商用, 米国)

• 分野カテゴリ: 音声通話・ビデオ通話 (ゲーミング向け)
• 採用技術: WebRTC (P2Pメディアストリーミング)、独自メディアサーバー
• リアルタイム性の実現: DiscordではWebRTCを活用して音声・ビデオのリアルタイム配信を実現しています oai_citation:4‡discord.com。ブラウザ版はブラウザ組み込みのWebRTC、デスクトップ/モバイル版はネイティブのWebRTCライブラリをC++で拡張した独自エンジンを使用し、大規模ボイスチャネルに対応しています oai_citation:5‡discord.com。多数ユーザーが参加する場合はサーバー上のメディア中継（SFU）を介し、遅延を抑えつつIP非公開化やモデレーション機能も実現しています oai_citation:6‡discord.com oai_citation:7‡discord.com。

Google Stadia (商用, 米国)

• 分野カテゴリ: クラウドゲーミング
• 採用技術: WebRTC (高画質ビデオストリーミング)、DataChannel
• リアルタイム性の実現: 廃止されたGoogleのクラウドゲームサービスStadiaはWebRTC技術を用いて、クラウド上のゲーム映像をユーザーのブラウザにリアルタイム配信していました oai_citation:8‡bloggeek.me。ゲーム操作信号はWebRTCのデータチャネル経由で即座にクラウドへ送り、映像は4K/60fpsといった高解像度でも数十ミリ秒程度の低遅延でストリーミングされるよう最適化されていました oai_citation:9‡bloggeek.me。

AWS IoT Core (商用, 米国)

• 分野カテゴリ: IoTプラットフォーム（クラウドサービス）
• 採用技術: MQTT over WebSocket Secure (WSS)
• リアルタイム性の実現: AWS IoT CoreではMQTT over WebSocketによるデバイス通信をサポートしており、ブラウザやモバイルアプリからもMQTTブローカーに直接Pub/Sub接続できます oai_citation:10‡docs.aws.amazon.com。デバイスは常時WebSocket (TLS)接続を張り、センサーデータ等をリアルタイムにクラウドへ送信しつつ、クラウド側からの制御メッセージも即時に受信します。この仕組みにより専用プロトコルが使えない環境でも双方向のリアルタイムIoT通信が可能です oai_citation:11‡docs.aws.amazon.com oai_citation:12‡docs.aws.amazon.com。

組込み/制御/産業向けリアルタイム通信の事例

CANバス （車載ネットワーク、国際標準）

• 分野カテゴリ: 車載制御（自動車、航空機など）
• 採用技術: CAN (Controller Area Network) プロトコル
• リアルタイム性の実現: CANバスは自動車のECU間通信に標準採用されているリアルタイム通信規格で、メッセージに優先度(ID)を持たせバスアクセスを制御します。複数ノードが同時送信を試みると、優先度が最も高い（IDが最小の）メッセージだけが競合を勝ち抜いて送信され、他は自動的に退避します oai_citation:13‡sitaltech.com。この非破壊アービトレーションにより緊急度の高い車両信号（ブレーキ要求など）は即座に伝送され、決まった時間内に必ず配送される決定論的な応答時間を保証します oai_citation:14‡sitaltech.com。CANは耐ノイズ性にも優れ、現在ほぼ全ての自動車や航空機、産業機械で内部通信バスとして用いられています oai_citation:15‡csselectronics.com。

EtherCAT （産業用ロボット制御、商用/OSS）

• 分野カテゴリ: 産業オートメーション（FA）、ロボット制御
• 採用技術: EtherCAT (イーサネットベースのフィールドバス)
• リアルタイム性の実現: EtherCATはドイツBeckhoff社が開発したリアルタイム産業ネットワークで、多関節ロボットのサーボモーター制御など高精度同期が必要な用途に使われています。例えばロボットメーカーのKUKAやスターブリ（Staubli）の制御系では、モーションコントローラと各サーボドライブ間の通信にEtherCATが採用されています oai_citation:16‡reddit.com。EtherCATはマスタが送信したイーサネットフレームをデイジーチェーン状に各スレーブ装置が順次読み書きする仕組みで、1ms以下の周期で数十軸の制御データをやり取りできるハードリアルタイム通信を実現しています oai_citation:17‡reddit.com。

DDS/RTPS (ROS 2などのミドルウェア, OSS/商用)

• 分野カテゴリ: ロボット・自律システム（産業/車載/宇宙）
• 採用技術: DDS (Data Distribution Service) / RTPS (Real-Time Publish-Subscribe)
• リアルタイム性の実現: DDSは分散リアルタイムシステム向けのPub/Subミドルウェア規格で、ROS 2 (Robot Operating System 2)をはじめ自動運転や航空宇宙分野で採用されています oai_citation:18‡design.ros2.org。DDSは標準でUDP上で動作するRTPSプロトコルを使用し、ノード間でのトピックデータ配信を行います。豊富なQoS設定により信頼性や配信期限、優先度を細かく制御でき、必要に応じて遅延を最小化したベストエフォート送信（UDPブロードキャストに近い振る舞い）から、高信頼のストリーミングまで調節可能です oai_citation:19‡design.ros2.org oai_citation:20‡design.ros2.org。実際、DDS/RTPSは軍艦や航空機制御、宇宙探査機、金融システム等のミッションクリティカルな現場で使われており、その信頼性と柔軟性が評価されています oai_citation:21‡design.ros2.org。

TSN（Time-Sensitive Networking）対応イーサネット (商用規格)

• 分野カテゴリ: 車載イーサネット、産業用ネットワーク
• 採用技術: IEEE 802.1 時間感応ネットワーキング (TSN)
• リアルタイム性の実現: TSNは既存イーサネットに決定論的通信機能を持たせた規格群で、最新のコネクテッドカーやスマート工場で採用が進んでいます。例えばBMWやAudiといった大手自動車メーカーは車内ネットワークにTSN技術を取り入れ、ECU間で低遅延かつ時間厳守のデータ通信を実現しています oai_citation:22‡fiberroad.com。TSNではスケジューリングや優先度制御により遅延上限を保証し、クロック同期(IEEE 802.1AS)で全デバイスの時間を揃えることで、センサーとアクチュエータの協調動作をミリ秒単位で制御できます oai_citation:23‡fiberroad.com oai_citation:24‡fiberroad.com。このようにTSN対応イーサネットは、従来のベストエフォート型通信では難しかった時間厳守型のリアルタイム通信を標準技術で可能にしています。

複合技術を組み合わせたリアルタイム通信事例

車両テレマティクス: CAN＋MQTT over WebSocket

• 事例概要: 自動車のオンボードCANデータをクラウドにリアルタイム送信するテレマティクスシステム。
• 構成技術: 車載CANバス + MQTTブローカー (クラウド) + WebSocket通信
• リアルタイム性の実現: 車両内のゲートウェイデバイスがエンジン回転数や速度などのCANバス上のデータを取得し、これをMQTTメッセージとしてクラウドのブローカーに発行します oai_citation:25‡emqx.com。ゲートウェイとクラウド間はセルラー回線経由でMQTT over WebSocketにより常時接続され、CANの各種センサーデータがフィルタリング・変換された上で即時クラウド送信されます oai_citation:26‡emqx.com。クラウド側ではダッシュボードWebアプリがMQTT over WebSocketでブローカーに接続しており、送られてきた車両データをほぼリアルタイムに可視化できます。これにより専用回線やプロトコル無しで、車載ネットワークとインターネットを橋渡ししたエンド・ツー・エンドのリアルタイム監視が可能となっています。

Web電話システム: WebRTC＋SIP (OSS PBX例)

• 事例概要: ブラウザから従来の電話網に発信できるWeb電話システム（例：オープンソースPBXのAsteriskによる実装）。
• 構成技術: WebRTC (ブラウザ) + SIPプロトコル + PBXサーバー (Asterisk等)
• リアルタイム性の実現: ブラウザ上のWebアプリ（WebRTCクライアント）はPBXサーバーに対しSIP over WebSocketで登録を行い、従来型電話の内線として振る舞います oai_citation:27‡docs.asterisk.org。ユーザーがWebから発信操作を行うと、WebRTCクライアントはSIPシグナリングをWS経由でPBXへ送り、PBXはSIPネットワーク/PSTNへ通話を橋渡しします。音声メディアはWebRTCによりエンドツーエンドで暗号化され、PBX上ではRTPに変換されて相手先の電話とやり取りされます。これによりブラウザから固定電話や携帯電話へのリアルタイム通話が追加ソフト無しで可能となり、WebRTCの利便性と既存電話網（SIP）の相互運用を実現しています oai_citation:28‡docs.asterisk.org。

スマート工場の制御: OPC UA Pub/Sub＋TSN

• 事例概要: 工場内のPLCや産業機器間で高精度同期通信を行う次世代制御ネットワーク。
• 構成技術: OPC UA Pub/Sub (産業通信プロトコル) + TSN対応イーサネット
• リアルタイム性の実現: OPC UA Pub/SubとTSNの組み合わせにより、工場のコントローラ間通信でミリ秒精度の同期と遅延保証が可能となっています。HuaweiやFraunhoferらが参加するスマートファクトリー実証では、TSN対応スイッチとOPC UA対応機器を用いて制御データのオープンなリアルタイム共有を実現しました oai_citation:29‡e.huawei.com。TSNネットワーク上でOPC UA Pub/Subを使うことで、複数メーカーのセンサー・アクチュエータが相互接続されてもネットワーク全体で時刻同期＋スケジューリングされた決定論的通信が行えます oai_citation:30‡e.huawei.com。これにより従来はベンダー独自だったフィールドバスを統一しつつ、製造ラインの制御通信において確定的な周期通信と低遅延を両立しています。